はじめに
数多く伝承されています昔話には、物語の面白さ、人間の優しさ、怖さそして勇敢さなどが語られています。また、内容としてみますと「勧善懲悪や善いことをすれば善い結果が、悪いことをすれば結果は当然悪く出る。」と、子供から大人まで、分かりやすい教訓として説明がなされています。
そこで、これらのお話を書き綴っていきたいと思いますが、第一話は古くからの書物で古事記がありますが、これにも書かれてあります有名な「因幡の素兎」から始めていきたいと思います。
【出雲民話#001】因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)1
隠岐の島にいた兎が、ある時、因幡の気多(いなばのけた)の岬へ渡りたいと思ったのですが、渡る術がないので一計を講じて、ワニ(サメ)を騙し、「兎の仲間と、ワニの仲間のどちらが多いか比べよう。」と話を持ちかけたのでした。そして、隠岐から気多の岬まで並ばせて、ワニの背中の上をピョンピョンと、一匹、二匹と数えながら渡り始めたのですが、あと少しで気多という時に、つい本音を話してしまい、騙されたワニは怒り、兎の皮を剥いでしまったのです。
皮を剥がれた兎は、赤裸となり体中が痛くて泣いているところを、稲羽の国の八上比売(やがみひめ)に求婚しようと、そろって出かけてきた八十神(やそがみ)が通りかかり、兎に「塩水で体を洗い、風に吹かれるといい。」と、教えたのです。その結果、治るどころか、先ほど以上に痛みがまし、因果応報と言えばそれまでですが、それはそれは可哀そうな状態でした。
そこへ、八十神の弟である大国主神(おおくにぬしのかみ)のまたの名である大穴牟遅神(おおなむじのかみ)は、まだ若く弟でもあったので、兄神達の荷物を入れた大きな袋を持たされ遅れて歩いていたところ、そこに兎が苦しんでいるのを見て、「何で苦しんでいるのか。」と聞きました。その説明を受けた大穴牟遅神は、「きれいな川の水で体を洗い、蒲の穂を敷いてその上に寝転べば治る。」と教えたのでした。そこで、兎がその通りにすると、体はたちまち元のとおりに戻ったのでした。
喜んだ兎は、大穴牟遅神に、「あなたこそ、八上比売を嫁取るにふさわしいお方です。」と予言したのでした。
その結果、八上比売に求婚した八十神は断られ、八上比売の遣い兎の予言通り、大穴牟遅神の優しさが八上比売の心を射止めたのです。
(因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)2 へ続く…)